終わりの前

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街は未だクリスマスムードだった。 ショッピングモールにある、このバーガーコーナーには、中年の女性店員が、一人で対応していた。 「いらっしゃいませ。 ご注文はお決まりですか?」 「テリヤキトリプルバーガーと、ポテトのL、それとトマトジュースはあるのかな?」 中年の男は、女性店員に質問していた。 「すいません、輸入がストップしてまして、この期限切れのものしかございませんが、いかがいたしましょう」 「そうだよね。 でも、飲めないほど悪くなってないんでしょう?」 「ええ、昨日が期限だったんです」 「それなら、それください」 少し迷った様子だったが期限の言葉に決心をしたのか、期限切れのトマトジュースを出してくれた。 厨房を見ると、やはり中年の男性が一人で料理していた。 飲食コーナーを見ると、半分の店が閉まっていた。 と、云うより良く半分開いていたなと思った。 この九州でも、2番目に大きな都市のショッピングモールは、それなりに華やかだった。 トマトジュースを飲みながら、初めてこの地を訪れた時を思い出していた。 長崎市に降りたったのは、なん年前になるだろう。 原爆資料館で見た歴史を、稲佐山から見た夜景の輝きを、阿蘇山の雄大さを、青の洞門の努力を、別府市の湯煙を、鹿児島桜島の噴火を、高千穂峡の神聖な空気を、熊本の清らかさな水を、 彼は、考えていた。
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