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「参ったなぁ。
どうします遠藤さん?」
「ヤツら、プロだな。
警官のひとりやふたり、
目じゃないって顔だったぜ」
「交番じゃなくて、
どこか大きな警察署とかありませんかね?」
宇崎には遠藤が、
華麗なるハンドルさばきで追っ手を振り切る姿を、
どうしても想像できなかった。
「三キロほど先にあるけどね」
「本当ですか!よかった!そこへ行きましょう!」
「それまでに捕まらなければ、だけどね」
「走ってるんだし、
この道じゃ追い越しもできないんだから」
「それがね、
そうでもないんだ。
ほら」
遠藤は宇崎に、
フロントガラスの先の道を見るよう促した。
「四車線ですか?」
「ああ。
あの交差点から先は、
道幅が広がってるんだ。
もし追いつかれて、
横に並ばれたり、
前に回られたら逃げられないぜ」
「どうするんです?」
「・・・仕方ねえ」
といいながらも遠藤は、
まんざらでもないような顔で背筋を伸ばし、
シートに深く座りなおした。
「ふたりとも足を踏ん張って、
しっかりつかまってろよ!」
エンジンを徐々に高嗚らせるタクシーの中で、
宇崎はやっぱりカーチェイスかと諦めながら、
無事故無違反歴30年の、
ベテランタクシードライバー遠藤に、
命を預ける決心をした・・・。
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