【第13話】危険な匂い2

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「おまわりさん! すみません!」 遅い夕飯だろうか、 カップラーメンをすすりながら、 新聞をめくっていた交番の巡査に、 車の窓を開け、 宇崎は大声で叫んだ。 「どうしました?」 宇崎の声に気がついた巡査は箸を置き、 ゆっくりと立ち上がった。 「宇崎さん、まずいよ! ヤツら降りてきた!」 ルームミラーを睨んで、 追っ手の様子をうかがっていた遠藤が叫んだ。 宇崎は、 窓から顔を乗り出し、 後ろを振り向くと、 10メートルほど後ろで止まった黒塗りの車から、 男二人がゆっくりと降りて来る。 ヤツらには交番が目に入らないのだろうか? 「どうかしましたか?」 おっとりとした足どりで近づいて来る、 人の良さそうな若い巡査に、 宇崎は後ろの連中にも聞こえる大きな声で叫んだ。 「助けてください! 変なヤツらに追いかけられているんです!」 「変なヤツらって、 なんでしょう? あなたたちは?」 よほど教育がいいのか育ちがいいのか、 巡査が、 満面の笑みを浮かべて宇崎たちの車の横に立ったとき、 後ろからバタバタと走る男たちの足音がした。 「宇崎さん、だめだ!逃げるぞ!」 もし道を尋ねていれば、 きっと懇切丁寧に教えてくれただろう巡査に、 食事を中座させてしまった侘びも言えずに、 宇崎たちの車は、 その場を慌しく立ち去った。
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