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「ご一緒ですか?」
巡査は、
宇崎たちに見せたそのままの笑みで、
小走りに近づいてきた黒いスーツの男二人に、
声をかけた。
「ええ、まあ」
「変なヤツらに追いかけられているとか?」
「ええ、さっきまで。
でも、もうどっかに行っちゃったんじゃないですか。
なあ」
「えっ?
ああ、本当だ」
「そうですか、それはよかった!」
「おい、行くぞ!」
「はい!」
「お気をつけて!
夜道は何が飛び出すかわかりません!
どうか安全連転で!」
心から交通安全を願い、
手まで振って見送ってくれる巡査の期待を裏切らぬよう、
男たちはゆっくりと車を発進させ、
軽く会釈をして、
宇崎たちの車を追った。
「大丈夫かしら、あのおまわりさん・・・」
腕っ節の強そうな男二人を前に蛮勇を奮う姿が、
あの巡査の笑頭からは、
どうしても想像できない倫子は、
心配そうに呟いた。
「大丈夫だよお嬢さん。
ほら、ヤツら、また追っかけてきた」
「ホント!よかったわね、宇崎さん!」
自らの危険も省みず、
初めて会ったおまわりさんの無事を喜ぶ倫子の優しさを、
宇崎と遠藤は改めて知らされたが、
今はそれどころじゃない。
宇崎はもう一度ブルースウィルスを、
遠藤はジェームスボンドを思い浮かべながら、
この後のシナリオを練っていた。
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