【第13話】危険な匂い2

4/5
前へ
/5ページ
次へ
「ご一緒ですか?」 巡査は、 宇崎たちに見せたそのままの笑みで、 小走りに近づいてきた黒いスーツの男二人に、 声をかけた。 「ええ、まあ」 「変なヤツらに追いかけられているとか?」 「ええ、さっきまで。 でも、もうどっかに行っちゃったんじゃないですか。 なあ」 「えっ? ああ、本当だ」 「そうですか、それはよかった!」 「おい、行くぞ!」 「はい!」 「お気をつけて! 夜道は何が飛び出すかわかりません! どうか安全連転で!」 心から交通安全を願い、 手まで振って見送ってくれる巡査の期待を裏切らぬよう、 男たちはゆっくりと車を発進させ、 軽く会釈をして、 宇崎たちの車を追った。 「大丈夫かしら、あのおまわりさん・・・」 腕っ節の強そうな男二人を前に蛮勇を奮う姿が、 あの巡査の笑頭からは、 どうしても想像できない倫子は、 心配そうに呟いた。 「大丈夫だよお嬢さん。 ほら、ヤツら、また追っかけてきた」 「ホント!よかったわね、宇崎さん!」 自らの危険も省みず、 初めて会ったおまわりさんの無事を喜ぶ倫子の優しさを、 宇崎と遠藤は改めて知らされたが、 今はそれどころじゃない。 宇崎はもう一度ブルースウィルスを、 遠藤はジェームスボンドを思い浮かべながら、 この後のシナリオを練っていた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加