【第14話】危険な匂い3

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「・・・はい、世田谷通りを下っています。 所轄の署に・・・。 えっ??どうしてですか? ・・・しかし、 とりあえず止めて職務質問だけでも・・・。 そうですか、 わかりました。 失礼します」 本村巡査は、 離れすぎた眉毛を精一杯寄せて、 電話を置いた。 「後ろの車だけでも止めておけばよかった・・・」 顔や身なりで人を判断しないよう、 常日頃、 心がけている木村だが、 それにしても、 タクシーを追いかけるように走っていったベンツの連中は、 なんとなく殺気が漂っていた。 それに、 タクシーの後部座席にチラッと見えた美少女は、 なにかに怯えているようだったので、 万一に備え、 署に電話を入れてみた。 しかし、 ベンツのナンバーを本庁に伝えが、 しばらく待たされた後、 「気の回しすぎだ」 と言って、 電話を切られてしまった。 「何か匂うぞ・・・」 その穏和な顔からは想像できないほど、 本村巡査は嗅覚が優れていた。 といっても、 倫子が発揮する嗅覚ではなく、 事件を嗅ぎつける職業的勘だ。 つい先日も、 身なりはいかにも紳士風の男が、 住宅街をうろついていたので、 職務質問をしたところ、 全国に指名手配されている、 空き巣の常習犯だった。 顔や身なりで惑わされぬよう、 常日頃心がけている本村巡査だった。 「今なら、追いつくかもしれないな・・・」 本村巡査は、 テーブルの上に、 『巡回中』 の札を立て、 交番の脇に止めてあるカブに飛び乗り、 颯爽と世田谷通りを西に向かって発進した。 「お嬢さん、 今、助けに行きますからね! それまで、 どうかご無事で!」 ガラス越しでも、 十分かわいかったその女の子の顔を思い浮かべながら、 本村巡査もまた、 気分はすっかり洋画のヒーローだった。
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