最後の客

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 それから私は貯金を全額下ろし、故郷の小さな街にサロンを開業した。  ドリームセラピーなんて胡散臭いもの、勿論最初は誰も問い合わせても来なかった。  が、私は街の公民館の掲示板や役所の広報板、強いては街の電柱にまで手作りの広告を貼り付けた。  貼り付け捲った。  開業してから2ヶ月、ようやく初めて客がやって来た。  あれから更に2ヶ月。  大反響でも大盛況でもなかったが、私のセラピストとしての人生は、なかなかに良かったのではないかと、今はそう感じている。
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