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後は彼女が、見たい夢を見るだけ。
私は眠りについた彼女のパンパンになったお腹にソッと手を当てた。
『12月25日が予定日なんです』
そう言って現れた最初の客が彼女だった。
彼女はシングルマザーだった。
どうしても産まれた子供に会いたい。
それが、彼女の願いだった。
「良い夢を」
彼女はそのまま逝きたいと言った。
少し迷ったが、最終的にはそれもいいなと思った。
私は部屋の窓を開け、真っ黒な空を見上げた。
小さな雪の粒が舞うように落ちて来る。
こんなに穏やかなクリスマスは、初めてかも知れない。
「メリークリスマス」
そう呟いた時、遠くの空に大きな花火が一つ、上がった。
H26.1.22 byKAORI
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