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「ここですね、噂の神殿は」
「そうっすね、メイちゃん。・・・ようやく着いたっす~」
私達は立派な建物の入口と思われる所から、上を見上げていた。
この建物自体が博物館になりそうな大きさに、少々驚いていたのだ。
私はさまざまな洞窟や建物を探索してきたが、噂に聞いたよりもすごい。
「さてヴィンさん」
私は隣にいる銀髪で緑のバンダナをつけた青年に声をかけた。
「この立派な扉、どうすれば開けられると思いますか?」
「え?……いや、普通に……」
質問に答えようと、彼は自分の背丈の二倍はある扉を押したり引いたりとぐいぐいと動かす。
当然ながら、扉は開かない。
「鍵とかないんすか?」
「まず鍵穴がないじゃないですか」
「あ、そっか……」
やはり、こういう所は初心者ではわからないか。
ヴィンさんは先日、一流冒険者の私(自分言うのも何だが)についていきたいと申し出た友達だ。探索は初めてなのだとか。
ここは先輩らしく、冒険の基本とかその他もろもろを教えてあげなくては。
「うーん、ギブアップ。どうやって開けるんすか?」
考えるのをやめたヴィンさんは首を傾げてこちらを見下ろした。(シキの身長が低いため)
「では私が」
私は扉の前に行き、扉を持ち上げるように力を入れた。
すると……。
ゴゴゴゴゴ……
「おおー、扉が……!上にやればよかったんすか」
神殿への道を見せた入口を見たヴィンさんは、驚き半分、呆れ半分といった表情を見せた。
「たまにあるんですよねー。魔法でもない限り開かないんじゃないかっていう扉が」
「でも、だいたいこの開け方なんすか?」
「まぁ、だいたいそうですね」
「……昔の人も、頑張って知恵を使ったんすね」
「そういうことにしておきましょ。行きますよヴィンさん」
「あ、メイちゃん!」
私が先に神殿に入ろうとすると、ヴィンさんが肩をポンとたたく。
「何ですか?」
「えっと……。よろしくお願いするっす!」
そう言うと、ヴィンさんはニッと笑顔を見せた。
「はい、よろしくです」
私もニコッと笑うと、さぁ行きますよと神殿の中の暗闇へと進んだ。
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