第6話

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
優、か。  かわいい名前だな、同い年だし。  と、俺はいったいなんて自己紹介すればいいんだ?  いっそのこと、正直に男だと言ってしまおうか?  いや、この雰囲気壊したくないし。  躊躇していると、姉貴が助け舟を出した。  「優ちゃんね。あたしは、このめぐの姉で、田口 玲。   めぐも高1なのよ。江田高校のね」  うーん。このままめぐで通すしかないか?よし。  「あの、三石さんは、なにか武道でもやってる?」  「優、でいいよ。ためだし。   あたしは空手やってるんだ。部活も空手部」  「それでかあ。半端ないもんね」  「めぐちゃん、あっ、めぐって呼んでもいい?」  俺がうなずくと、優が話し続けた。  「めぐは、部活なにやってる?」  「うん。水泳部」  「へー。じゃあ、身体動かすの嫌いじゃないんだ?   今度一緒にプールでも行く?」  プール、と聞いて、一瞬テンションが上がりかけたが、プールはまずい。  「うーん。いつも泳いでるから、プールじゃないほうがいいな。あっ、あれが   いい」  「あれ?」  「うん。公園でボート乗るのはどう?」  言ってしまってから、これじゃあデートだ、まずったかな?と思っていたら、   優は、意外と好反応。  「いいね。あたし、ボート大好き。じゃ、今度一緒に行こう、約束」  優に指切りげんまんされて、すっかり舞い上がっていた俺の横から姉貴が、  「メアド交換しないの?」  と、言ってくれた。  「あっそうだった。めぐ、携帯は?」  優に言われるまま、俺は、いそいそと部屋から携帯を持ってきた。  さっそく赤外線送信。  やったー、俺は幸せもんだ。  「あっ、私もう帰らなくちゃ。夕飯の支度、私がやってるの。お母さんは仕事  で遅いから」  「へー。偉いねえ。いいお嫁さんになれるよ」  姉貴が俺の方を見て、にやにやしながら言う。  「ううん。あたし、結婚なんてしないよー。男、嫌いだもん」
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!