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私は頭の中の声に向かって頭の中で叫んだが、声は一向に酷くなるばかりだった。
「うぅ……」
仕方ない。眠れない限りはこうしていてもいつまでも声は聞こえてくるのだ。だったら私にできるのは、諦めてただひたすらに声が消えるまで我慢することだけだ。
―――――…っ!!
―――――…っ!!
―――――…っ!!
……………
…………
………
声は止まない。何十分も布団の上で寝ていたので身体と頭はすでに覚醒しているのに、声だけは消えない。
いつしか不協和音じみた音楽にすら聞こえてくる声を聞きながら、私はただ天井を仰ぎ続ける。
「……こわい」
不意に、そう私は呟いたのだ。
私には喋る意思がないのに、勝手に言葉が出たのだ。
最初は頭の中を占領し続けていた声に対して、知らぬ間に恐怖を覚えていて、それを私が無意識のうちに呟いたものだと思った。
――だけど、何かがおかしい。
身体が急に震えだす。
目に涙が溜まっていく。
呼吸が、辛い。
さっきまで聞こえていた声は、音楽をフェードアウトするかのように、何故か急に遠ざかっていくのだ。
「……こわい、こわいよ……」
それは私じゃなかった。
声を出しているのは私なのだけれども、私は「怖い」なんて脳内に思い浮かべていない。
なのに、私は「怖い」という。
まるで私の口を借りて、「誰か」が喋っているかのように。
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