プロローグ

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僕には、なにも出来なかった。 まだ、子どもと言われる年齢だったから。 「六日の菖蒲 十日の菊」 その言葉を残して一人の姉が、逝ってしまった時、 傍に居たのは、僕一人だった。 姉の夫となっていた人は、息子を迎えに行っており、その場にいなかった。 その当時、父母と、もう一人の姉とは、いろいろあって、絶縁状態だった。 誰もいない部屋で呟かれた言葉… 僕だけが聞いた言葉… 言葉の意味はわかっても、 姉がどんな想いで、その言葉を僕に伝えたのか、 わからないまま、 月日は過ぎて、 僕は、デザイナーになりたかったという、 逝ってしまった姉の夢を叶えた。 「僕」を「私」に変えて、 姉の夢を叶えれば、 姉の気持ちが、少しはわかるかと思ったんだ。
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