三年目の、

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  最後に「好き」という言葉を口にしたのが遥か昔の事のような気さえする。 このままではマズい。 そんなことを考えてはみるが、いつも疲労に負けて思考を中断する羽目になる。 「ふぁ…」 佳奈は口元も隠さず豪快に欠伸をした。 誰も気にする素振りを見せないのは、乗客皆が同じ気持ちだからだろう。 白い息を吐きながら駅からマンションへの道を歩く。 歩きながらお腹が鳴り、そこで夕飯を摂ってなかった事を思い出した。 …暖かい部屋で赤ワイン飲みたい。 美味しいフレンチ食べたい。 平日の遅い時間に非現実的な事を考えていれば、それをたしなめるかのように一月の冷たい風が佳奈の脚を撫でる。 脚を止めて、何となく空に目を向けた。 空気が澄んで良く晴れていたが、街が明るくて星は見えない。 止まって損した、と佳奈は内心毒づいた。 コートの襟をぐっと掴んで肩を竦め、寒さから逃れるように近くのコンビニに飛び込んで缶チューハイを一本買った。 彼のものも何か、とは思ったが、こんな時間なら悠也はもう寝ているかもしれない。 比較的時間に余裕を持てる会社に勤める悠也と、不規則極まりない会社に勤める佳奈。 それが普通になってしまったから、寂しいとは思わなかった。 そんな自分は女として如何なものか。  
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