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「ねぇ、どうしたの?」
「何が?」
「もしかして私を待ってた?」
「うん」
やはり、と佳奈は身構えた。
黙々とカレーを食べる悠也を盗み見る。
お風呂上がりの茶色がかったサラサラの髪。
尖った顎。色白の腕。
イケメン、と言うより綺麗な顔をしていた。
でもその顔より、のんびりとした雰囲気が好きだったな、と佳奈は感傷に浸る。
佳奈はいつかやってくるこの日を覚悟していた。
彼に愛想を尽かされる日を。
だって逆の立場だったら絶対嫌だもん、こんな仕事女。
しょうがない、とは思っていても、やはり時が来れば覚悟は揺らいでしまう。
悠也は速いペースで細い身体にカレーを掻き込んでいく。
さぞかしお腹が空いていたんだろう。
「話ならちゃんと聞くから食べてて良かったのに」
悠也の良く動くスプーンを眺めながら言うと、悠也が顔を上げて佳奈を見た。
「今日、カレーの日なんだって」
「え?」
「一月二十二日。…カレーの日らしいよ」
「……」
絡まり合っていた視線が外れると、悠也は再びスプーンを動かした。
それを見ながら、私もやっと口に運ぶ。
久し振りに食べる家庭のカレーの味が優しく広がった。
日にちを言われて思い出す。
今日、一月二十二日は
――私の誕生日だ。
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