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「…ごめん」
「え?なにが?」
「…仕事ばっかで、ごめんなさい」
去年も一昨年も、悠也は一人でこのカレーを食べていたんだろう。
想像すると泣きたくなった。
「いいよ。明日も頑張れるように沢山食べて」
「うん、ありがとう」
テーブルの上には水とカレーのみ。
サラダすらない。
フレンチと赤ワインには程遠いが、それ以上に佳奈の心を温めた。
「…来年は、私も有給取りたいな」
口をついて出た言葉に、悠也が笑う。
「佳奈の場合は仕事の都合でどうなるかわからないから、無理しなくていいよ。僕は休むけど」
「休むの?」
「うん。カレー作るから」
「…一日かけて?」
「不器用だから、どうしても一日かかっちゃうんだよ。目標はもう一品」
「佳奈が帰るまでには間に合わせたいけど」と真剣な顔をする悠也に、今度は佳奈が笑った。
一本の缶チューハイを分け合って乾杯した時、悠也が初めて「おめでとう」と言った。
ワインで乾杯なんかより、数倍も幸せだと思った。
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