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カーテンの隙間から冷えた部屋に街灯の灯りが漏れる。
佳奈はそれを初めて綺麗だと思った。
「…二年と、一日遅れになっちゃったけど」
佳奈の背後から伸びる悠也の掌には、キラキラ光る小さな石の付いた指輪があった。
佳奈の左手を取り、それを薬指に押し込む。
「やっと渡せた」
声は、ぴったりと張り付いた素肌から振動で伝わった。
「…カレー記念日?」
「うん。一生カレー記念日」
悠也の不器用なプロポーズに、佳奈は背中から抱きすくめられながら気恥ずかしそうに笑う。
お互い大切な事を言いそびれる人間だけど、こういうのも良いと思った。
「好きだよ」
「うん」
「来年も作ってね」
「うん」
「…好きだよ」
白んできた空に焦る気持ちはなく、まだ部屋に残るカレーの匂いに酔いしれる。
来年も再来年も。
これからはこうやって二人でカレーを食べながら年を重ねていくんだろう。
癒しだと思っていた布団より、年に一度のカレーが何よりのご褒美になるだろう。
…全てを大切にしよう。
佳奈も指輪に誓った。
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