晩餐

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 鈍色に輝くシンクの中に、深紅の液体が流れ落ちる。  蛇口を捻れば、赤はゆるゆると曲線を描き、排水溝へと流れていく。  誰も訪れることがない、廃校となった校舎の家庭科室には、オレンジ色の光が射しこんでいる。  赤い太陽が落ちていく。  この景色も今日で見納めだ。  何をしていたって。  僕はカッターを握り締めた。  あまり刃の大きい包丁では上手くいかないことが、今までの実験でわかっていた。  僕は手先が器用な方ではない。  皮を剥ぐ、というのはなかなか神経を使う作業だ。  どうしても余分な肉が付いて来たり、剥いだあとに残ったものを見るとどうにも気分が悪い。  身体の各部位を切り落とす作業には、わりと慣れた。  関節のあたりを上手く狙えば、たいした力を必要としないで切ることができる。
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