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瀧本がそんな事を言いながら興奮している間にも空には夜の帳が下りた。
各々作業を終えた3人は下校し、冷たい空気の中に繰り出していった。やはり季節柄、うどんが恋しくなる寒さだ。
小麦冶までは電車と徒歩で向かった。
徒歩でJRの樫井駅まで歩いたが、道中はしきりに雪が降っていた。駅の中はクリスマスらしい飾り付けがなされ、サンタのコスチュームを着た売り子が携帯の宣伝などをしていた。
3階建ての売り場を抜けてホームに降り立つと、雪混じりの冷気に体を震わせる人々が数多くいた。
間もなく赤と黒に顔を塗られた電車が到着し、そこそこ混んだ車中に3人も乗り込んでいった。
3人が乗り込むと、瀧本が生野の右腕に絡みついてきた。生野も初めは警戒したが、冬の寒さから免れる術として警戒を解いていった。
電車は千早駅に到着し、3人は電車を降りた。
千早駅から3人は再び少し歩き、小麦冶に到着した。
店内はカップルが多く、お互いの体をその愛情で暖め合っていた。
そこで3人はというと、小さめのテーブルを2つ合わせた4人掛けのものを、生野と田浦で挟み、瀧本が生野の横に座る形で使うことになった。
店内は混み合っているが、店側の回転がすごく効率的で店員がすぐに来てくれた。
「ご注文をお受けしまぁす」
「肉うどんで」
「ご……、ごぼう天うどん一つ」
「得々うどん一つ」
田浦から瀧本、そして生野の順に注文した。
「かしこまりましたぁ」
そう言い残し、店員は去っていった。しかし、瀧本が生野の横に座ってからずっと、なぜか顔を赤らめてモジモジしている。
生野は心の内でこんな予測をした。
ま、まさか、俺のごぼう天をほおばりたいのか……?
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