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冗談めいた生野の思惑とは別に、何かいたたまれなくなったのだろうか、瀧本は席を立ち、水を取りに行った。
瀧本が立つのが早いか、田浦が身を乗り出して生野に話しかけた。
「なぁカイチョー」
「なんや」
「唐突な話ではあるが」
「なんや田浦、唐突でも凹凸でもなんでもよかくさ」
「実のところを言うとだな、俺は瀧本さんに片想いをしている」
「凹凸とかじゃなくて本当に唐突やね」
「まだそれを引きずるのか。……まぁそれは良いとしてだ。俺は瀧本さんに片想いをしている」
「それは分かっとる。やけど、どこに惚れたん?」
「彼女のな、〝デキル女″って所に惚れたのだ」
「そうや。俺はそんなに思い入れないけど」
「俺から見れば、瀧本さんが隣に座っているお前は羨望の眼差しで見るに値する」
「そうや。じゃあ、この時間を楽しませてもらうわ」
生野がそう言い終えるくらいの頃に、水の入ったグラスを3つ抱えて満面の笑みをたたえた瀧本が戻ってきた。瀧本は店員のように快活に振る舞う。
「お冷やお持ちしました~」
そう言って生野と田浦の前に水の入ったグラスを置く瀧本。
しかし……、どこか可愛いわいな。
そんな瀧本の姿に、生野の心はじんわりと、またゆっくりと暖まっていた。
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