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そんな事を知らず、瀧本は生野の隣に座るかと思いきや、今度は田浦の隣に座った。まぁ個人の自由だから、と生野は気に留めないことにした。
瀧本が席についたくらいのタイミングで、うどんを鉄製の台に抱えた店員が来た。
「お待たせしました~、お先に肉うどんのお客さま~」
店員の問いかけに田浦が軽く手を挙げる。
「次に、ごぼう天うどんのお客さま~」
次は瀧本。
「最後に、得々うどんのお客さま~」
最後は生野だった。
それからは各々が注文したうどんをすすり、各々が食べた分の代金を払って、3人は店を後にした。
生野がまだまだ降り続く粉雪に目を遣ると、田浦が白い息を吐きながら言う。
「さすが小麦冶、評判を得るだけあったな」
対して、瀧本が言葉のボールを受ける。
「そうね。言うことなしとはこの事だわ」
それを受けたまま、瀧本は生野に歩み寄り小さい声で言ってきた。
「ねぇカイチョー、明日2人で博多駅のイルミネーション見に行かない?」
急な申し出に少し動揺するが、生野は体裁を繕って賛成する。
「お、おぉ……、行こうやないね」
生野が瀧本の顔を見ると、目を合わせられないといった様子で頬が赤らみ、心なしか照れているように見えた。
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