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魔物は唸りを上げ、両手を上げて襲い掛かる。その瞬間、突然横から黒炎が魔物を飲み込んだ。
少女は何が起きたのか理解出来なかった。
死を覚悟し、懺悔と後悔を残し無惨に殺されるのを待つだけだったはずだ。
何故、自分は生きている?
「熊かー。獣臭くて食いたくないんだけど、まぁ贅沢は言えないかなっと」
自分が吐いた炎で魔物が中までしっかり焼かれるのを待つ漆黒龍。
何時までも燃え続ける炎に火力を間違えたか? と心配に成るが気にしない。というより考えないようにした。
近くに人間の死体が転がっている事に気が付いてはいるが、熊よりも不味いので放置している。
「ぁ、あの……」
「なぁに少女ちゃん。話し掛けた序でに塩胡椒持ってない?」
「も、持ってません」
「そっかー、残念無念また来年」
緊張気味に話し掛けてきた少女を適当に流し、漆黒龍は欠伸をする。
「あの! ……なんで、私を助けてくれたんですか?」
「んー? ねぇ君。ひょっとして自惚れてない?」
「自惚れなんて」
「いんや、自惚れてるよ。自分を助けてくれたって思ってる時点でね。別に君に興味があって炎を吐いた訳じゃないよ。俺が空腹だったからだ」
「そう、ですか」
「うん。そう」
そこでまた会話は止まる。いや、そもそも会話だと漆黒龍は認識していない。話し掛けられたから返事をした。ただそれだけの事。
漆黒龍の頭には、肉が焦げすぎないかという心配しか無い。
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