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「御願いです漆黒龍様! どうか村をお救い下さい」
何処にでもある小さな村の外れに、それは人よりも圧倒的に大きく、その隠しきれない存在感はどんな魔物も寄せ付けない力強さを持っている。
名剣よりも鋭利な爪、全てを噛み砕く牙を持ち、漆黒の鱗は全ての攻撃を通さない。
龍と対峙するのは普通の村人。いや、村の長、村長だ。
村長は偶々羽休めに降りて来た漆黒龍を急いで追い掛け、今村が抱えている問題。魔物から村を守って欲しく漆黒龍にここへ居座ってほしいと頼み込んでいる所だ。
それに対し、漆黒龍の答えは、
「退屈そうだから拒否」
とてもその姿から発せられた声とは思えないほど軽い調子で拒否った。
「それに魔物に困ってるのに魔物に頼るって可笑しいでしょ」
「そ、それは、村にはギルドに依頼出来る程の余裕もなく」
痛い所を突かれ、苦し紛れに紡がれた言葉も最後には声として出ていなかった。
「だから? そんな事俺にはどうでもいい事だよ。何より退屈そうだ」
村長の頼みを拒否した最大の理由、それは『退屈』。そもそも漆黒龍がここに降りたのは退屈しのぎを探す為だ。
適当な所に居れば人間が勝手に集まって無謀に向かってくる。それはちょっとした退屈しのぎだ。
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