最近思う事

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 そして、漆黒龍は思い付く。 「そうだ。村を焼いたら強い人間がやって来るかな?」  漆黒龍の呟きに、村長は顔を蒼白にする。  村を救う様頼みに来たのにまさか村を焼かれるとは思ってなかったのだ。相手は魔物だと言うのに、だ。 「おおお、お止めください! それだけはどうか」  既に次への楽しみに期待する漆黒龍に、村長の震えた懇願は届かない。  漆黒龍は畳んでいた翼を広げ、羽ばたかせる。  その際発生した突風に村長は吹き飛ばされ意識を失う。  漆黒龍は空を飛ぶ。1つの村を焼くために。  村は基本的に平和だった。今年は作物が豊富に採れ、最近の魔物が村人を襲うという問題が無くなれば村は暫く潤う、筈だった。  誰かが空を指差して龍だ! と叫んだ。周囲に居た村人も釣られて空を見た。そこには黒い龍が飛んでいた。  村人は最初、村長が龍を説得してくれたのだと喜んだ。だが、その喜びは直ぐに悲鳴へと早変わりする。  龍が降りて来たのだ。幾人かの村人を踏み潰し、その余波で村人が死に、民家が跡形もなく吹き飛んだ。  漆黒龍が炎を吐き。村を焼き始める。逃げる村人を咆哮ですくませて炎で焼く。  漆黒の鱗は火の粉で反射し、皮肉にもこの龍を美しくした。  空が赤色に染まり、焦げた臭いが辺り一帯を埋め尽くす。  街にも届けとばかりにもう一度咆哮し、漆黒龍は飛び立つ。  破壊され、燃やされた村には、生存者が居なかった。  ただ1人、村はずれで気絶する村長を除いて。
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