最近思う事

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 漆黒龍が村を焼いてから2週間。漸く人間が動いた。  漆黒龍はこの2週間、早くしろーとばかりに街の近くで派手に暴れたり、街に空から炎の雨を降らせたり、深夜に何度も何度も何度も何度も咆哮したりしていた。  そして今日、300人以上の人間が集い元村へ向かっているのを遥か上空から発見し、全速力で戻って来た所だった。  戻ってくる途中、人間が手間取りそうな魔物は予め焼いて来た。これで人間は滞り無く漆黒龍の元へとやって来るだろう。  実に楽しみだ。とでも言うように漆黒龍は空へ向かって炎を吐き出す。  暫くそうした後、漆黒龍は人間が来るのを大人しく待つ。待つ事もそれなりに楽しいのだ。何よりも退屈をしない。  楽しみにしている時間という物は落ち着かない。どうしてもそわそわと体を揺すってしまう。  無意識の内に尻尾を動かし、翼を小刻みに動かす。  眠ろうにも眠れずただ時間だけが過ぎていく。  この時間だけは、人間の結末は変わらずとも楽しい物だ。  爪を磨き、牙が欠けていないかを確かめ、鱗の艶を確認する。  よし、万年絶好調だ。  後はどうするかを考える。  爪で裂くか、牙で砕くか、炎で焼くか、尻尾を使うか、空へ飛ぶか、それらを幾つか制限し、人間との争いを楽しくする。  本気じゃなくとも全力なら楽しいのだ。
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