最近思う事

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 突然、大地を揺るがす程の震動にギルド団長はバランスを崩し、空を見上げる形で倒れ込む。  そして見てしまった。視界を埋め尽くす程強大な存在を、大地に足を埋もれさせているそれを。  ギルド団長だけではない、ギルド員全員が尻餅をつき、漆黒龍に恐怖している。  恐怖に思考を埋め尽くされる中、ギルド団長は何故突然漆黒龍が現れたのかを考える。  急な震動。これはつまり漆黒龍が落ちてきたという事、そして漆黒龍が落ちる前、その場所には何があり何が居たのか?  漆黒龍が足を上げる。  ギルド団長は思わず目を背けた。  見ていられなかった。見たくなかった。  夥しい血の池を、血の池に浮かぶ白い骨にぶよぶよとした元人間の肉の塊を、その目に焼かれ目を閉じてもその一瞬の光景は鮮明に浮かび上がる。  再び震動。今度は漆黒龍が跳躍した余波による物だ。  恐怖と絶望が蔓延する。  既にこの場に居る人間は漆黒龍の存在感に飲まれ抵抗する気を削がれている。心を折られ、意思を砕かれ、ただただ訪れる死を受け入れ、ただの、そこに有るだけの肉の塊へと成り果ててしまった。  震動。  最初に居たギルド員はたった二度の落下によって約3分の2にまで数を減らされてしまった。  震動。  震動。  震動。震動。震動。震動。  漆黒龍はまるで蟻を一匹一匹踏み潰して行くように、少しずつ、少しずつギルド員を踏み潰していく。
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