第1話

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 集団喰人事件。事件の首謀者の名は横田純一郎。杉並区在住の45才、男性。ホームレスを言葉巧みに唆し、また自らも晩餐に参加していたと思われる。取り調べに対し「死ぬ前にやってみたかった」と容疑を認める。  事件報告書をまとめながら、武内は白髪まじりの胡麻塩頭を掻いた。  刑事になって20年。刑事部長を務め、様々な事件を解決に導いた。今回も例外ではない。そのベテランの武内が事件報告書をひとつ作成することなど朝飯前なのだが、今回ばかりは勝手が違った。あることが気がかりで、どうも気乗りがしないのである。  武内は煙草に火を付けて、デスクの引出しから退職願と書かれた封筒を取り出した。  幸運の星が地球に落ちてから2年。その間に辞めていった部下は多くいた。しかし、まさか松永が辞めるとは夢にも思わなかった。
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