第1話

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「あの幸運の星のニュースが流れた時、震えが止まらなかった。怖かったからではありません。あれは聖書が正しかったと証明するものです」  ハルマゲドン。クリスチャンはそう呼んでいるらしい。世界は一度滅びる。しかしその後、神の子は復活し人選をするのだそうだ。そして正しき人間には共に生きる権利を与える。 「だから、僕は最後まで刑事を続けるつもりです」 「俺にはわからないな。無宗教なもんで」 「それ、海外で言わない方がいいですよ。自分は生きる為の教えが何一つないってことですから」 「教えのない連中が一番平和とは、皮肉なもんだ」  武内はおちょこの酒を一気に流し込んだ。松永も笑いながら、口に含んだ。  その松永が、今日辞職したのである。
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