第3話 捨て猫

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3 捨て猫 【??×ファミリー+α】    ◇   ◇   ◇ 初めて見る街は、キラキラ、ピカピカ。 どこを見ても光、光、光。 たくさんの人間がボクの前を通り過ぎる。 ニコニコ笑って、楽しそうに。 幸せそうに。 だって今日は、ハッピーな日だから。 クリスマスイブは、奇跡が起こる素敵な日だから。 ずるい。 初めての外は寒くて、初めての独りぼっちは、こんなにさみしいのに。 ボクだけが世界から切り離されて、取り残されて、凍えている。 「パーティが終わったら、みんなで一緒に夢の国に行きましょう」 ママは笑ってそう言った。 「夢の国? お菓子、いっぱいある?」 マユミは目を輝かせた。 「もちろんさ。お菓子もおもちゃも、お前の好きなものがいくらでもあるよ」 パパがマユミの頭を撫でる。 「花火は!? 手に持つやつじゃなくて、昨日見たみたいな、バーンってなるおっきな花火だよ!」 はしゃぐマユミ、にこにこと頷くパパ。 「じゃ、ママが欲しい指輪もあるかな」 おどけて言ったママを、パパが抱き寄せた。 「全部あるよ。マユミの欲しいものも、ママの欲しいものも」 「パパのは?」 「あるさ。だから、みんなで一緒に行こう」 「家族みんなでね」 ――家族、みんなで――。 嘘つきなパパ、嘘つきなママ。 それともボクは、初めから家族じゃなかった? 「ごめんね……」 あやまるくらいなら。 「どうか幸運を」 置いて行かないで。 「なんで!? パパ、ママ!」 マユミが泣いても 「行こう」 ダメなの? 置き去りにされた時を思い出して、また少し泣きそうになった。 その時だ。 『ちょっとアンタ、こんな人目につくとこで何やってんの!!』 突然ガンッとゲージが揺れた。 ボクは目の前を流れる幸せそうな人間の顔とまばゆい光ばかりを見つめていたから、後ろの植え込みに潜んで近付いて来たソイツに全く気付かなかった。 見たこともない大きな身体のソイツは口が悪くて、怖くて怖くて、逃げ出したくなった。 『さっさと出な、連れてってやるから』
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