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第2話 野良猫
野良猫の多い街だったから、猫の姿が次々と消えていったことには誰もがすぐに気が付いた。
発情期には窓を開けて眠れない程の大合唱を轟かせ、週に数回は朝からカラスと競ってゴミ捨て場を荒らした奴らだ。
街から消えたことを、はじめの内、この近辺のニンゲンたちは手放しで喜んでいたそうだ。
ユウジはその話をした時、とても悲しそうだった。
彼は猫が好きなのだ。
私はそんな優しい彼が好きで、だから、ユウジに悲しい顔をさせる他の猫たちに軽く嫉妬を覚えた。
野良猫の失踪が局地的なものでなく全国的なものだと気付いてようやく、ニンゲンたちは焦り、慌てて原因を調べ始める。
もしかしたら彼らはどこか安全な場所を見つけ、集団で移動を開始したのではないか――そんな夢物語のような憶測まで飛び交い、野良猫についていけば最期の日を生き延びられるなどという滑稽な噂が立った。
そんな時に届いた、人里離れた山中で大量の猫の死骸が見つかったというニュースは記憶に新しい。
死骸からは、互いに喉を噛み切った痕跡が見つかった。
「個体数を減らせば生き延びる可能性が上がるから、互いに殺し合う……そうだよ、本能的に」
ユウジは苦悶の表情で、テレビの中の知ったかぶったニンゲンの解釈を噛み砕いて繰り返す。
――ユウジ、それは違う。
あれは、殺し合いなんかじゃないんだ。
「ねえケイト。こんな時に、どうしてケンカなんてするんだろう?」
ああ、思えば。
その時も私は、ユウジに本当のことを伝えるのが正しいことなのかどうか悩んだ。
殺し合いは真実ではないけれど、真実よりはユウジを悲しませないのかもしれないと。
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