14人が本棚に入れています
本棚に追加
2 野良猫
【名無し×名無し×名無し】
◇ ◇ ◇
「あ、猫!!」
「え、まだいるのか。のん気なヤツだなぁ」
ほらおいで、ちっちっち――じゃねえよ、馬鹿にしくさりやがって人間どもが。
「おいよせ、呼ぶな」
背の高いニイちゃんの方がそう言った。
ああ、そうしてくれると助かる。
だが、「ええ」と不満を顕わにするネエちゃんに対して、ニイちゃんは更に迷惑な提案をした。
「そのまま歩かせて、着いていこうぜ。『安息の地』に連れて行ってくれるかも」
……あったま悪いなコイツ!!
本気でそんな噂信じてやがるのか?
そんな場所があるなら、人間界のお偉い連中はとっくに逃げてるだろうが。
平和ボケした日本人の中には、この土壇場になってもまだ『どうにかなる』と思っているヤツが多くて笑えない。
そのくせなんの努力もしないで、のんのんと日々を消費していく。
常に他人任せ、誰かがどうにかしてくれる、自分だけは多分なんとかなると。
だっせぇ。クソ野郎どもが。
俺らの方が、よっぽど潔くてカッコいいと思わねえか?
そんなに『安息』したきゃあ、ついでに兄ちゃんの首も掻っ切ってやってもいいけどな!
「あっ!」
電柱と壁を交互に蹴って一気に駆け上る。
見上げる間抜け面、やっぱり止めだ、こんなヤツで手を汚してたまるか。
せいぜい『安息』出来る死に場所を探すんだな。
「あー……行っちゃった。お兄ちゃんが意地悪なこと言うから」
ああ奴らは兄妹だったのか、と気付いた時には、もうその声すら届かなくなっていた。
最初のコメントを投稿しよう!