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そもそも俺は人間が嫌いだ。
黒猫は縁起が悪いなんて根拠のない噂を流し始めたのはどこのどいつか知らねえが、俺を見るたびに奴らは言った。
「うわ、最悪」
「げっ!」
「あっち行け」
酷い時には石を投げつけられたり、腹を蹴られそうにもなった。
クソ野郎どもには自分さえ良ければそれでよしという考えと、自分より弱いモノを苛めたがる習性がある。
全員さっさと死んでしまえばいいのに。
――とは言え。
人間も猫もまとめて全員死ぬ日は、近づいているのだが。
早く探さねば、この辺りを根城にしていたのにどうしてこう見つからないのか。
タイムリミットは近づいていた。
このまま会えずに『その時』を迎えるのはまずい、時間が無くなればどこかで諦めて身を隠さなければならない。
分かってはいるのだが……
どうしても守りたい、交わした約束があるから。
もしかしたら俺は、『掟』を破ることになるのかもしれない。
――人間に死に際を見られてはならないという、猫の掟を。
最期の日を知ると、大抵の野良は街中を出てさっさと山奥へ引っ込んだ。
一部は『その時』を待つ内に既に気が違った奴らで、集団自殺の場所探し。
その方法はえげつなかった。
円になって一斉に隣の猫の喉に喰らいつく、まさに獣、地獄絵図。
折り重なる死骸に紛れた死に損ない何匹かの介錯を、俺が任された。
潔い?
――いいや、間違ってる。
あいつらも人間同様クソだった。
同族の血に穢れた爪と牙は、未だに俺を苦しめる。
手を下した俺もやはり、クソだ。
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