夢の続き。

3/7
前へ
/7ページ
次へ
高3の卒業式の日、俺たちは別れた。俺が終わらせた。 元々一年前から決めてたんだ、別れようって。 忘れもしないあの日、俺は一番裕を傷つける言葉を言って突き放した。 「......もう、あいつは父親になったのかー」 一人寂しく晩酌をしながら、部屋に飾ってある二人の写真を眺めた。 幸せそうに笑っている、裕と俺。 「良かった。やっぱり、間違ってなかった」 俺には、出来ないもんな。 少し酔ってしまったようだ。ついつい独り言を呟いてしまう。 そんな自分が嫌で、ヤケになって缶ビールをぐいっと飲み干した。 自分の出した答えに後悔はしていないが、裕のことを思い出すと、胸が苦しくなる。 最近はあまり思い出さなくなったのに。 *** 『───別れよう、裕』 3月5日。 式は学校が違うため別々だったが、夕方に裕が家まで来てくれた。 裕は前々から東京の大学でスポーツ推薦が決まっていて、大学生になったら一緒に住まないかと、大学が決まった時に提案された。 俺は勿論だと答えた。 本当はそんなこと思ってもいなかったのに。 そして卒業式を終え、具体的に何処に住もうかと言う話の途中で俺が別れを告げた。 あの時の裕の顔を、今でも忘れられない。 別れを決めたきっかけは、皮肉にも、裕の母親の一言だった。 『あんたも男の子ばっかとつるんでないで、そろそろ彼女でもつくって連れてきなさいよー』 今思っても、冗談で言ったのは分かっていたし、ごく普通の親子の会話だったと思う。 裕も『出来たらな』と、笑いながら答えていた。 別にこの会話に傷ついたわけではなかった。 ただ、その時気づいたんだ。 俺が、この親子の幸せを奪っているんだって。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

98人が本棚に入れています
本棚に追加