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ふいに、かぐや君の顔が近付いてきた。
間近で濡れた瞳に見つめられて、心臓が跳ねる。
ーー『いいですか』。
伺いをたてるようなその視線。
ーーどうぞ。
精一杯余裕ぶって、俺は微笑み、目を閉じた。
まだか、と薄目を開きそうになったところで、
ようやく、唇に触れる。
そっと、撫でるように優しいキス。
かぐや君の、涙の味のキス。
昔々のそのまた昔。竹から生まれたかぐや姫は、月に帰りたくないと泣いたそうな。
ーーでは、うちのかぐや君は?
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