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「…………シィッ!!」
息を短く吐き、薙刀を振りかぶりながら曲がり角へ走る。
タイミングはバッチリで、男達が曲がり角から出てきたと同時に、薙刀を全力で振りおろす。
1番前を走っていた男の首筋にプラスチック製の刃が当たる。
男の意識を刈り取る感触が薙刀を持つ手に伝わり、微かな達成感が全身を覆う。
意識を失った男は前のめりに倒れ、仲間の1人がそれに足が引っ掛かかり、前のめりに転んだ。
その隙に、振りおろした薙刀をそのままアスファルトの地面に押し付けて走っていた勢いを殺し、距離を取ろうと体をひねって、ゴミ捨て場の方に戻ろうと足を踏み出した。
しかし前に出した足が地面に着く寸前、背中に冷たい何かが走った。
(…………ッ!?)
体勢を崩し、意識を失った男のように前のめりに倒れる。薙刀は手から離れ、地面に軽い音をたてて落ちる。
「……うぅ……」
背中、正確には肩甲骨のすぐ下を鋭い痛みが貫く。
ドロリとした液体が服に染み込んでいく感触もあって、ようやく刃物で斬られたことを実感した。
首だけを動かし、後ろに目を向けると、血の付いたナイフを持った男がこちらに近づいてくるのが見えた。
「……ぁ……ぁ」
まともに声も出ない。視界がにじんでいく。
私はどうなるのだろう。ここで殺されても、薙刀部の皆や家族も気づかないだろう。
あかりはなんでこんなことしたんだろう。私が何かしたんだろうか。
にじんだ視界の中で、男が私の顔に向けて、手を伸ばしてくる。
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