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「……はっ、……はあ、はぁ」
息が苦しい。もう10分は走っているだろうか。
後ろから、まだ3人の男達が走ってくるのが、アスファルトの地面を通して分かる。
私が履いている学校指定のスニーカーは、走っている途中に何度も水溜まりを踏んで、中まで濡れていた。
前方に曲がり角が見える。小回りを利かせて右に曲がる。
体重と鞄、部活で使う薙刀の負担がかかり、足が悲鳴をあげる。
痛みをこらえながら前を見ると、直線の道と曲がり角が微かに見えた。
後ろから男達が、言葉として聞き取れないくらいの罵声を浴びせながら追ってくる。
振り向かず前だけを見て走る。夜の住宅街は光りさえなく、体の芯まで冷えきってしまうような寒気があった。
たった1時間前、私はこんなことになるなんて予想すらしていなかった。
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