闇に飲まれる赤髪

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 屋上に続く階段には照明がなく、まだ夕方なのに暗い階段を上りながら、私は何の話なのか考えていた。  顔も名前も知らない1年生が、私に何の用だろう。  学校で誰かから嫌がらせを受けているとかなら、私じゃなくて先生や生徒会に頼ればいいし、彼女に恨みを買うようなこともしたことはない。  第一、彼女が仕返しに何かしようとする性格ではないと思う。  教室で見た感じ、彼女は引っ込み思案な印象だった。因縁をつける不良タイプではない。 (もしかしたら私の髪の事かな……)  私の髪は産まれた時から赤い髪で、今までも染めているんじゃないかと誤解された事が何回もある。  彼女が生徒会に所属していて、私の髪について言いたいことがあるという可能性も否定できない。  ただこの学校は外国人やバイリンガルの生徒も多く在籍していて、髪の毛についての規定は皆無に等しい。  いろいろ考えながら階段を上りきって、私は屋上に繋がるドアを開ける。  開けた瞬間、射し込んでくる夕陽の光が目を焼く。  夕陽の光を手で遮りながら屋上に出ると、背中を屋上の鉄柵に預け、座り込んで読書をしているあかりさんがいた。 「あっ寧香先輩。本当に来てくれたんですね……」  読んでいた文庫本を、鞄にしまいながら立ち上がるあかりさんの顔には、安心したような表情が浮かんでいた。 「単刀直入に聞くけど、私を何の用で呼んだの?」  私がそう言った途端、あかりさんの目が潤んだ。 「あっごめんなさい! 別に怒ってる訳じゃないから!」  私はとっさに謝る。さっきの言い方だと、怒っているような印象を与えても仕方ないと、今更ながらに思った。  そう思ってる間にあかりさんの目に涙が溜まり、流れ落ちる。 「ひっ、ひっく……。うぁぁ……」  嗚咽まで混じり、泣く。嗚咽が止むまで私はあかりさんの背中を撫でながら謝り続けた。
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