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椎名さんの話を聞いて、司さんと椎名さんがどれ程の仲なのかが分かった。 意地悪したい気持ちが動いて、司さんが私に指輪を贈ったことを言ったけど、冷静に考えたら言うべきではなかった。 司さんが椎名さんに言ってないことを私から聞いたら、椎名さんが傷つくんじゃないかって、どうして気づかなかったんだろう。 「そっか、司が贈ったんだ」 ほら、椎名さんが傷ついたような顔してる。 「椎名さん、私、すみません」 しばらくの沈黙の後、 「その指輪、貸して?」 手を差し出されたので、左手から指輪を外して椎名さんの手に乗せる。 指輪を受け取った椎名さんは指輪の内側を確認していた。 確認をし終わると、私に返す。 「本当に司が贈ったんだね。 指輪の内側、見て?」 そう言われて、確認をする。 「ふぉー、えー?」 そこには、“for A”と彫られていた。
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