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「あの、私なんかが聞いても大丈夫な話でしょうか? 無理させてまで、聞きたいとは思ってませんので」 私が言おうとしたことが分かった上で、椎名さんは話を続ける。 「大丈夫だよ。 俺たちの父親がどうしようもない男でさ、同時に2人の女性を愛してしまったんだ。 それが、うちの母親と司の母親。 どっちとも籍は入れてなくて、2人の家を行き来している適当なことしてたら、同じぐらいの時期に妊娠したらしくて。 まぁ、俺の母親の方は2人目の妊娠だったんだけど。 変な話、俺の母親と司の母親は仲が良かったみたいでさ」 あまりにも衝撃的な話に、言葉をなくす。 そんな私を気にせずに椎名さんは続ける。 「俺の方が1週間だけ、生まれるのが早かったから、お兄ちゃん。 二卵性って言い方したけど、母親が違うから顔が似てるわけないんだ。 司の母親は、元々体が弱くて司を生んで、力尽きたんだ。 俺たちの方は、生活がいっぱいいっぱいで司を育てることができないと判断して、泣く泣く施設に入れたらしい」 もう、私は黙って聞くことしかできなかった。 「それから、親父と母さんは生活するために働いて、俺が5歳になった時にやっと収入が安定して、そんな時に親父が過労が原因で倒れてそのまま亡くなった。 困り果てた母さんは、実家に帰ったんだ。 その実家が、この料亭。 勝手に出て行って、勝手に帰ってきて、最初はじいさんに叩かれたらしいんだけど料亭の手伝いを毎日、一生懸命していたら、じいさんも許してくれたって」 淡々と話す椎名さんの声に抑揚は感じられず、聞かされた話をそのまま話している、そんな印象を受けた。 「それから、5年経って、俺が小学5年生になった時、司が家に来たんだ。 母さんはいつか必ず司も自分が育てるって決めてたらしくて。 司が来る前に、ある程度の事情は聞いてたけど俺は司が来るのを楽しみにしていた。 だけど、司の方はそうでもなくってさ。 慣れるまで大変だったよ」 ここから話す話は、自分が体験した話だからか、椎名さんは大変だったと言いつつも楽しそうに話している。 本当に司さんのことが、好きなんだなぁ。
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