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「そんなことより、さっさとそのアマを捕まえろ!」
飴色の髪の男は相棒に叫び、再びナディルに襲いかかった。
ナディルは身をかがめて銀のきらめきを避け、男が剣を振り切った瞬間、男の手をめがけて蹴りを入れた。
剣が宙を飛び、カラカラという音をたてて床に転がる。
「安眠妨害だって言ってるじゃないですか。騒いだら他の部屋の人にも迷惑ですよ」
ナディルは、今度は真正面から飴色の男の喉に剣をあてがった。剣の下から血が一筋流れ出す。
「動くともっとたくさん、首に赤い色が増えますが?」
「う……」
飴色の髪の男は短くうめいて、助けを求めるように相棒を見る。
だが、彼の親愛なる友人の頭には、金の鱗の竜がしっかりと張り付いていた。
「こちらへ。言うことをきかないと、その竜が火を噴く。そうなったら、頭が丸焼けになっただけじゃすまないと思いますよ」
ナディルが小太りの男に言うと、金の竜は、天井に向かって口を開いた。
ぼううっという濁音と共に、赤と黄色の派手な炎が噴き出される。
炎が収まると、次に竜は小太りの男の顔に向かって、ぱかりと口を開けた。
男は、硫黄の匂いが漂う竜の口に震え上がる。
竜は楽しんでいるように、ピンク色の舌をちろちろと動かして見せた。
「そうそう。いい子ね」
ナディルは、二人の背中を合わせ、反対向きに並ばせる。
それから、腰に下げていた薄緑のロープを取り、彼らに向かってふわりと投げた。
ロープはまるで生きているかのように、ひとりでにぐるぐると回り、二人組を締め付ける。
「私を無傷で捕まえようとして、手加減したのが悪かったね。顔に傷でも付けちゃ、値打ちが下がるって思ったのかな」
ナディルは肩にガガを乗せ、腰に手を当てて、二人の侵入者を見下ろした。
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