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「あなたたちの手配書、きょう通った町で見たよ。確か若い女の子をさらっては売り払うという、悪党二人組。そうだよね?」
「割といい値の懸賞金が付いていたから、これから当分、高級な宿に泊まれるね」
ガガが、嬉しそうに言った。
「よりにもよって、『翡翠のナディル』に手を出そうとしたのが、運のつきですね」
その時、そこにいる三人と一匹以外の声が、割って入った。
夕方言葉を交わした、あの金髪にアメジストの目の若者が、腕組みをして扉にもたれている。
ナディルは眉をしかめ、ガガは首を傾けて、その若者を眺めた。
「げっ、ヒスイのナディル……」
小太りの男が呟いた。飴色の髪の男は、けげんそうな顔をする。
「何であなたがここにいるんですか?」
ナディルは、若者に訊ねた。
「この二人があなたに何かしそうだったから、見張っていたのです」
「それは、どーも。ご苦労様なことで」
ガガが、めんどうくさそうに、一応お礼を述べる。
「ありがとう。でも、これくらいの事態を切り抜けられないようでは、とても女ひとりで旅は出来ません。こういうの初めてじゃありませんから」
ナディルの素っ気ない態度を気にする様子もなく、若者は人懐こい笑みを顔に広げた。
「まあ、『翡翠のナディル』がそう簡単に誘拐されるわけはないとは思いましたがね。あなたの立ち回りも見たかったし。いや、たいへん素敵でした。あんなに軽やかで素早く動ける方は、とても貴重です」
「当然だ」
ガガは言って、天井を向く。
「で、この人たちの処遇は?」
若者が、人さらい二人組を指差した。
「明日の朝、手配書を出していた町へ引き渡します。不幸な娘さんが増えないように」
ナディルは答える。
「また翡翠のナディルの名が上がりますね。でも、明日の朝まで彼らをどうするんですか? まだ夜も明けてはいませんが」
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