4.オーデルクの公子

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「また、こいつかよ」  ガガは、ぼそりと呟いた。 「竜くんも、おはよう」  若者は、ガガにも挨拶をする。 「ぼくには、ガガっていう名前がある」  ガガは、不満そうに言った。 「ガガ。素敵な名前だね」  若者は、無謀にもガガの頭を撫でようとしたが、ガガが口をぱかりと開けたので、思わず手を引っ込めた。  彼は気を取り直して、ナディルの目をじっと覗き込む。 「翡翠のナディル。本当にあなたの目は、翡翠のように……」 「で? 何か御用ですか?」  ナディルは、頭ひとつ分以上背の高いその若者のセリフを遮った。  この人、エリュースと同じくらいの背丈だ。同じ角度で見上げねばならない。  いつも胸に抱きしめている記憶のかけらが、ナディルに教えた。 「これを届けに来たのです」  金の髪の若者は、小さな皮袋を差し出した。 「はい、どうぞ、翡翠のナディル」 「え……?」  袋は、ナディルの右の手のひらに、ずしりとした重みと共に乗せられた。  その中に金貨が詰まっているのが、袋の口から見える。 「それから、これもね」  若者は、呆気に取られているナディルの左手を取り、赤く輝く宝石を握らせた。 「ルビーです。ガガくんにちなんで、これにしました」 「あのう……?」 「懸賞金ですよ、あの二人組の」   若者が、にっこりと屈託のない笑みを浮かべて、言った。  ナディルとガガは、顔を見合わせる。 「あの二人、あなたが?」 「そう。夜明け少し前に馬に乗せて、ベルタイトの町まで運びました。『翡翠のナディル』の使者としてね。懸賞金は、持ち運びに支障をきたさない程度は金貨にして、残りはルビーにしてもらいました。それから、これもお返ししなければね」
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