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「また、こいつかよ」
ガガは、ぼそりと呟いた。
「竜くんも、おはよう」
若者は、ガガにも挨拶をする。
「ぼくには、ガガっていう名前がある」
ガガは、不満そうに言った。
「ガガ。素敵な名前だね」
若者は、無謀にもガガの頭を撫でようとしたが、ガガが口をぱかりと開けたので、思わず手を引っ込めた。
彼は気を取り直して、ナディルの目をじっと覗き込む。
「翡翠のナディル。本当にあなたの目は、翡翠のように……」
「で? 何か御用ですか?」
ナディルは、頭ひとつ分以上背の高いその若者のセリフを遮った。
この人、エリュースと同じくらいの背丈だ。同じ角度で見上げねばならない。
いつも胸に抱きしめている記憶のかけらが、ナディルに教えた。
「これを届けに来たのです」
金の髪の若者は、小さな皮袋を差し出した。
「はい、どうぞ、翡翠のナディル」
「え……?」
袋は、ナディルの右の手のひらに、ずしりとした重みと共に乗せられた。
その中に金貨が詰まっているのが、袋の口から見える。
「それから、これもね」
若者は、呆気に取られているナディルの左手を取り、赤く輝く宝石を握らせた。
「ルビーです。ガガくんにちなんで、これにしました」
「あのう……?」
「懸賞金ですよ、あの二人組の」
若者が、にっこりと屈託のない笑みを浮かべて、言った。
ナディルとガガは、顔を見合わせる。
「あの二人、あなたが?」
「そう。夜明け少し前に馬に乗せて、ベルタイトの町まで運びました。『翡翠のナディル』の使者としてね。懸賞金は、持ち運びに支障をきたさない程度は金貨にして、残りはルビーにしてもらいました。それから、これもお返ししなければね」
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