わからない

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気がつけば、ボコボコボコ……という音が聞こえていた。 ハッとなって目を開くと、数分前にもみた空間にいた。 真っ黒な水があって、明るさはほとんどない。 息は苦しくないのに、確かに水の中にいる。 『起きた?』 不意に、人の声が反響する。 上から聞こえてるのか、下から聞こえているのか、全然わからない。 『あぁそっか、喋れないんだっけ……まぁいいや。 僕は……そうだなぁ、今の君の創造主とでも言っておこう。さしずめカミサマってとこかな? 君にちょっとお話があってさ。』 おはなし……? 『そう、お話 大丈夫さ、もう苦しい思いはさせないから 聴くよね?』 肯定しか求めていないその問いかけに、半信半疑で頷いた。 『いいこだね じゃあ早速本題……とも言いたいけど、まずは君が何でここにいるか、そこから話そう』 さて、どう話せばいいか。 少し思案するような間を置く。 『君は一度今までの世界で死んで、君達のいうファンタジーな別の世界へ召喚及び転生するはずだったんだけど…… ちょっと血筋に問題があったみたいでね? 予期せぬ事態にグダグダしてたら、『君』っていう意識はもうその転生の資格が失われちゃって捨てられた…… 要するに巷で噂の転生したら勇者になっちゃったって展開の失敗作、って感じになっちゃったわけ。ここまでお判り?』 ……わかるも何も、まだ続きそうなこの話に既に頭がついていけてない。 ファンタジーの世界から召喚される?僕の意識?捨てられた?失敗作?血筋に問題があった? 頭の中でいろんなワードが飛び交う。 『わかんないかぁ……でもまぁ仕方ないよね じゃあやっぱり、順を追って一つ一つ説明するよ?』 どこか楽しそうで、優しげな声が反響した。
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