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『さ、今度こそわかったかな?だいぶ噛み砕いたと思うけど……質問はないよね?』
一方的に投げられた話に、僕は……
頷いた。
正直、全部を飲み込めたかというとそうじゃないけれど、きっとこういう世界なんだって理解しなきゃいけないんだろうなって思った。
神さまはニシシ、と満足げに笑って僕の頭を撫でた……気がした。
『よし、じゃあここからは新しいお話。
神様にすらポイされたら輪廻にすらもう戻れないわけなんだけど、俺が興味を持って、ちょぉっと細工したの。
わかるかわかんないけど、会社と同じだよ。せっかくA部署からB部署が引き抜きをしたのに、デスクの片付けまでして段ボール抱えた社員をやっぱごめんねお前の席なかったわって言ったらそりゃ路頭に迷っちゃうでしょ?
ね?君とっても可哀想だったの。』
しかも君の場合、路頭に迷うどころか死んでるも同然だし、ほら、あまりにも可哀想。
大変に戯けた調子。
今までと空気があまりにも違って思わず首を傾げるも、話はまだまだ続く。
『で、どこに生き返らせるかは決まってなかったから、地図出してダーツしたら魔王サマの屋敷のとこに刺さったんだよね!
まぁここなら僕のいつもいる空間と近しいところがあるし、暇になったらこうやって呼べそうだし。良物件良物件!って思って生き返らせちゃった。』
……明るい声から溢れ出る適当さ。
っていうか魔王って勇者が倒すやつだよね?あれ、立場が全然違う気が……
なんて思っていようとも、神さまは無視だ。
『さ、早くしないとまた君が目を覚ませなくなっちゃう。クレームはまた今度ね。時が来ればまぁ話せるようになるしさ。
次は君の情報、知っといたほうがいいでしょ?
名前はミオ。性別は男ってのは流石にわかるよね。ファミリーネームは……俺にもわかんない。なんかよく読み取れなかった、ごめんね。
年齢は10歳。その割にはだいぶ知識が多いけど、君は前世でも本を読むのが得意なタイプだったみたいだ。これからもたくさん本を読んでおくれ。
種族はきっといつかわかる時が来よう。俺はこれでも神様だったし、それとなく調べるさ。
それから君の右目は……ごめんね。見えないよね。でも、いざという時にはきっとーーーー』
キィィィィン…という静かな耳鳴りが声を遮り、思わず耳を押さえた。
『…いってて……時間切れみたい。俺も君も、ここにいるのには限界があるんだよね。
魔王サマにはもう話は通ってる。
ああ見えて本の虫だから、この世界についてとか大体のことはもう知ってるし、わかるはずだから、教えてもらってね。
あぁそれから、邪神がこういうのはあれだけど……
君に、幸あらんことを祈ってるよ』
はっとなるほど優しげなその声を聞くか聞かないかのうちに、僕の意識は静かに沈むようにフェードアウトしていった。
ーミオside endー
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