わからない

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けほ、と咳を一つしてから痛みに閉じた目を開けて、思わず息を呑む。 突き刺さるようなとげとげしい声と、凍てつきそうなくらい冷たい視線。 背筋に寒気が走り、嫌な汗がじわりと浮かんだ。 「いくら坊ちゃんが通したお客とはいえ、これほど問いただしても素性を話すのに迷うようなお客様は不審に思いまして… 一体どんなやましいことがあるんでしょう?」 すっと目を細めながら笑い僕の頬に触れた、その瞬間。 ピキン、という音が聞こえた。 「っ!!!!!!」 同時に、刺すような痛みと冷たさ。 恐る恐る目の下辺りを見る。 澄んだ水に紫色を溶かしたような色をした、綺麗に透き通った……氷だ。 氷が僕の頬を凍らせている。 ……逃げなきゃ。弁解を、でも喋れない。どうすれば、何か行動を、 思っても思うだけで、身体はがたがたと震えるばかりだ。 じわりじわりと広がっていって、ついに喉元も凍りつく。ヒュ、という音が喉から漏れる。 「すみません。私は自他共に認めるくらい、昔から疑り深い悪魔でしてね……一度疑ってしまうときちんとお話いただけないと満足できないんです。 ほら、氷漬けにはなりたくないでしょう?」 あぁ、口元こそにんまりとしているが、僕を見る目はさながら敵を見る目と同じだ。 すみません、という割には謝るような素振りなどまるでない。 むしろない罪を自白させようとするくらいの、強い圧。 恐怖で、頭が真っ白になりそうだ。
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