第2章 a hostage

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   まるで、いつもどおりの様子を取り戻したジュピテルに対して、もう、必要な「分析」は終わった……とでもいうかのように。  そして、それが実際にそうであるということが、黒スーツの次の発言で証明された。  「……確かめようと思ったんですよ。アナタの強さを」  「ふぅん。いまさらかよ。で?」  「アナタは強い」  「ふん。当然だ。んなこたぁ確かめなくとも自明の理ってやつだな」  「強い。いや。強すぎる。それこそ、どうしてTOP19の第1位がアナタではなく左端なのか……と疑問に思うほどに」  「気持ち悪ぃ奴だな。どうした急に?」  「悔しいが、真正面から戦えば、9割以上の確率で私はアナタに負けるでしょう」  「なめんな。テメェ……100%俺様が勝つに決まってんだろぅ」  機嫌を悪くした……というよりは、合いの手を入れる程度の軽い口調で、ジュピテルは黒スーツが口にした勝敗の割合に訂正を入れる。  少しだけ頬をひくつかせて苛立ちを見せたものの、黒スーツは一つ息をすってそれを表情の奥へと埋め戻し、先を続ける。  「いいでしょう。訂正します。正面からのぶつかり合いなら、今のアナタに私は絶対に勝てない。だから考えました」  「ほぅ。何をだ?……まさか俺様の軍門に下って親衛隊長にでも取り立ててくれ…とでも言うつもりか?よせやい。テメェなんざぁ信用できるか」 ・・・
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