プロローグ

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プロローグ

(1) 疾走と喪失 ・・・    呼吸を乱しながらも、素早く建物と建物の隙間の路地に体を滑り込ませた。  (はぁはぁ…はぁ…はっ……………んむぐんむふぅ…)  バタバタと複数の足音が乱れるようにして、建物の横を通り過ぎていく。  月明かり。  足音と同じだけの人数の影が、自分の飛び込んだ物陰を明滅させる。  つまりは、差し込む月明かりでこの路地は意外に明るく、壁から張り出した柱の陰に何とか体を潜ませてはいるものの、もしも覗きこまれでもしたら簡単に発見されてしまうだろう。当然、物音を立てるなどもっての外だ。だから…  (んむんむ…………んんん……ぷ、)  「…ぷふぁっ!!…こ、殺す気なの!?ミコト!!」  「しっ…。静かに!…私にその気はなくても、あの連中には大ありなんだよ!」  先に物陰に身を潜めていたミコトに、無理矢理に口元を抑えられていたカミ。  呼吸が乱れた所に口など塞がれれば誰でも、窒息しそうになる。  苦情を言うのは当然だが、いつものオットリとしたミコトはどこへやら、十分に音量は抑えられているものの厳しい口調で逆にカミは叱責されてしまう。 ・・・
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