第1章 TOP19狩り

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   背中を向けたまま、時々、思い出したように溜め息つくジーパンを見つめたまま、ヴィアは考える。今更ながらだが、ジーパンの「死ねない理由」とは、何なのか…と。  ヴィア自身のソレは、非常に簡単なことだ。彼は、もう、此処でしか生きられない。  現実世界のメディカル・プールに浮かんでいる彼の肉体は、究極の医療技術であるシムタブをもってしてもどうにもならない病…自己免疫疾患…に冒され、現実世界での【死】へと向かう急な坂を転がり落ちているような状態にある。  まぁ、細かいコトは第一巻の38話の中程を読み返してくれゃ…という超面倒臭がり屋のヴィアだが、彼はいわゆる「親持ち子女」…血族名持ち…だから、彼の保護者たちは一応、懸命に彼の命を少しでも長らえようと奔走してくれている。  しかし、その努力も虚しく、ヴィアは明日をも知れぬ命…どころか、現実時間における1秒後に命があるかどうかも知れぬ、危篤とも言える状態なのだった。  仮想対実時間レートが90:1であるデスシム世界にログインし続けているからこそ、彼は残された寿命…実際どれだけかは知る術もないが…の90倍の時間を生きるコトが出来るのだ。  だから、ヴィアは、最期の一瞬までデスシム世界に居ようと…いや、最期のその時をこの世界で迎えようと決めている。この世界での【死】により強制ログアウトさせられてしまえば…現実世界での【死】にあっと言う間に呑み込まれてしまうのだから…。  しかし、ジーパンはどうだろう?  ひょんな事…これも第一巻の38話を参照でヨロシク…からジーパンのこの世界での【命】を救い、そしてGOTSS契約を結んだヴィアだったが、考えて見ればジーパンのプライベートな事情と言うモノを、ヴィアは全くと言って良いほど知らなかった。 ・・・
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