第1章 TOP19狩り

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   目眩がした。熱中していたのが、何かの理由で急に我に返った時のように。自分の立ち位置が分からず、平衡感覚を失った時のように。  これだけジーパンのために尽くしてきた自分が、本心を隠されたまま背中を向けられている。何と滑稽なことか。何と惨めなことか。  (…おぃおぃおぃ。よせやい。何だこの思考は。まるで、ジーパンに恋する乙女が、アスタロトという恋敵に嫉妬しているみたいな感じじゃねぇか。オェッ…気持ち悪ぃ!)  そう考えた途端。猛烈な怒りが、ヴィアの腹の底から湧き上がる。  ジーパンに対する怒りではない。自分の不甲斐なさに対してだ。  何が…と言えば、それは未だにジーパンを「弱い」と表現せざるを得ないレベルにしか出来ていないという現状に対してだ。今日だって、ヴィアが防御魔法を展開し、突撃するジーパンを無理矢理に止めなければ「勇者様御一行」に間違いなくやられていただろう。何ヶ月もタウン・アタックを繰り返したのに、そんな状態だ。  現時点でのアスタロトの強さは正確には知らないが、あのマボとの領土争奪戦での凄まじい戦闘を思い返すまでもなく、ジーパンよりも遙かに強いことは間違いない。  駄目だ。こんなんじゃ…全然…駄目だ。ヴィアは、頭を強く振る。  最近、時々、ヴィアは自分の仮想の体がブレる…というか、透ける…というか…そういう症状を自覚することが増えた。ジーパンには気づかれていないし、話す気も無いが。  このデスシム世界での【死】よりも早く、現実世界での肉体が【死】を迎えた時に、この世界での仮想の体が…そして、ヴィアの精神が…どうなるのかを彼は知らない。  クリエイターに訊けば教えてくれるかも知れないが、最近は全く姿を見ない。 ・・・
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