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第2章 a hostage
(11) ジュピテルにとってのパラス
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「何故、ジュピテル様は領土争奪戦を休止なさっているのですか?」
その問いが、パラスの口から出されたものでなければ、ジュピテルは黙って最後までの発言を許さなかっただろう。
彼女の可憐な口元から悪意無く出された問いだったからこそ、ジュピテルはむげに途中で遮ることをせずに、最後までその問いを聞いたのだと思われる。しかし、それでも12人の親衛隊長たちですら敢えてはしない不躾な内容な問いであったためか、普段なら決してパラスに向けることのない厳しい表情で、ジュピテルは彼女を睨む。
「…どういう意図でそれを訊く?」
ゆっくりと、それでいて隙も無駄もない流れるような動作で、ジュピテルはいつもどおり横たわっていた豪奢なソファーから起き上がり、そして立ち上がる。
目を鋭く細めて顎をそらした下目づかいで、遠いものでもみるようにパラスを見下すジュピテル。いつもパラスに向けられている優しさはどこかへ消え失せていた。
「いえ。意図など…。ただ、以前はあれほど精力的に領土の拡大にお出かけになっていらしたのに…どのような心境の変化なのでしょう?…と」
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