第2章 a hostage

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   いや。よくよく考えてみれば…女性に乱暴を働いていないという噂が真実であったという保証はどこにもない。意図的にそのような悪評が広まらないように、12人の親衛隊長たちがコントロールしていたのかもしれないのだ。…が、もし、ジュピテルがそのような乱行を働き、あまつさえ部下を使ってそれを秘匿しようなどとする小悪党だったとした場合、はたして神を仰ぐかのような忠誠を12人の親衛隊長たちから得られ続けたりするものだろうか?  まるで、別人のような乱暴さを見せるジュピテル。  それとも、これが彼の本当の姿だったのか?  「…ふん。怯えて声も出せねぇ…ってか?はん。いいだろう。他ならぬお前の顔に免じて、最初の問いには答えてやろう。俺が、何故、最近は領土争奪戦を行わないか…だったな?」  「………」  「一定以上の領土面積を超えたあたりから、得られるメリットよりもそれを維持するための労力の方が遙かに上回るようになったから……だ。どうだ、納得したか?」  「…ぅそ……それは……」  「お?…意外そうな顔をするとは……意外だな。まさか俺が『最大領土の領主』だなんていう下らない称号に未だに拘っているとでも思っていたのか?……そんなもの、俺の領有面積が全体の50%を超えた段階で、もう十分達成されちまってる。ましてや『全世界制覇』なんて餓鬼っぽい夢をかたるような恥ずかしい真似するわけねぇわな」  「……そんなこと……」  どう返答したらよいのか?パラスの瞳は可哀想な程に細かく揺れていた。 ・・・
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