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しばらく必死に何か言葉をつむぎ出そうとしたパラスだが、やがて諦めたようにその視線を落とし、表情を消してしまう。
そんなパラスを、ジュピテルは冷たい視線で見下し、肉食獣が獲物を捕獲してこれからいままさに食せんとする時のように口の端を持ち上げ……牙を剥く。
「さぁてと。質問の答えには満足したか?……満足したよな?……よし。じゃぁ、いつもの様にお楽しみの時間だ。今度は、俺様を満足させてみろ」
パラスの肩を掴むジュピテルの手にぐっと力がこもる。華奢なその肩を砕いてしまうのではないかと思われるほどの握力。手の甲に禍々しいほどの筋が浮かび上がる。
次の瞬間。
ジュピテルのその手が、拳の形へと変わる。掴んでいたハズの肩は、しかし、実際に砕け散ったりはしない。
その手の中から…消失したのだ。一瞬のうちに。
「ふん。やはり、お前のソレは魔法ではなかったんだな?」
握り締めた拳を、ゆっくりと開きながらジュピテルは静かに呟く。
その手から視線をゆっくりと引き剥がして、数段下がった部屋の入り口付近へと目を向ける。
苦痛に歪んだ顔で、さっきまで掴まれていた肩をさするパラス。砕かれてこそいないようだが、不自然に下がったその肩は、おそらく外されてしまっているようだ。
あれ程強く掴まれた状態を無理矢理に解いたのだから当然の結果だろう。
・・・
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